灯台もと暗し、焼売いと旨し

 日頃ニュースというものを能動的に見に行く習慣が無いので、世の中で起きていることについてはせいぜいラジオから流れてくる情報くらいでしか得ることがない。まぁ話し相手は猫くらいしかいないからそれほど情報に疎くても困ることはないのだけど、こと日本酒、それも我が地元の話題に乗り遅れているのはちょっと面白くない。一応5ちゃんねる酒板の神奈川(東京)スレは定期的にチェックしているのだけど、あそこはもうダメだね。だったらお前が書き込めばいいじゃんと言われそうだが、あそこでは以前随分コケにされたから死んでも書き込むものか。もうすぐ死にそうだけど。

 さて本題。この日は南足柄市に向かっていた。目的地は一応決まっている。範茂史跡公園。さて、今大河に藤原範茂は登場するか?しないかな。これまで未訪だったがあずまやがあるようだし、ほど近い場所にヤオマサ南足柄店もある。

 ということで買い出しはヤオマサでと思ったものの、大雄山駅から歩いて行くのでせっかくだから駅前の小田原百貨店(通称:小田百)大雄山店も覗いておこう。元々ユニー→ピアゴの撤退を受け入居した地場スーパー、これまでも何度かチェックしてきたが正直日本酒の品揃えで感心したことは無かった。ところがところが、なんだか見慣れぬラベルの4合壜がドーンと並んでいる。お店のPOPも貼られていて、

小田原唯一の酒蔵、誕生!(だったかな?うろ覚え)

 え?相田酒造の廃業後、たしかに小田原市内に蔵元は無くなったが。よくよくPOPを読むと、愛知県の森山酒造が市内鬼柳に蔵を移転したのだそうな。「蜂龍盃」という銘柄は聞いたことはある。地図を確認したところ鬼柳といっても市営住宅とかのあるあたりからは随分離れた南側の卸団地内、私が幼年期に3年ほど住んでいた成田(なるだ)からもそう遠くない。そんなことより驚いちゃったのがその、幼年期に住んでいた社宅の所在地たる某社が閉鎖していたこと。10年前に前を通ったときはまだ現役だったのに。

 それにしても、だ。森山酒造移転のニュースは昨年夏にいくつかのメディアで報じられていたようだが、私のアンテナには引っかからず。件の匿名掲示板の神奈川スレでも話題にもならなかった。別に地元のネタを知ってなきゃいかんってもんでもないけれど、なんだかとっても悔しいわ。

 さて、せっかくだからご祝儀で「蜂龍盃」をお買い上げしたいところではあるが、70%精米の純米酒でお値段2200円…庶民にはちょっと手が出せまへん。また機会があったらということで、実はもうひとつとっても気になる4合壜が置いてあったので(こちらは税抜き830円也)こちらとつまみを購入、範茂史跡公園までえっちらおっちら歩くことにした。

 史跡公園は小高い丘の上にある。登るのに骨は折れるが、ガキ、もといお子さまに囲まれることがなさそうなのは大歓迎である。ちなみに大雄山駅方面からアプローチすると途中「公園徒歩入口」と書かれた道案内がある。私はもちろんここから上がったが、なかなかエグい激坂でかなり死ねます。楽に登りたい方はヤオマサ方向へ回り込んでクルマも通れる道から行けば勾配はずいぶん緩い。まあ、こんなところです。


 激坂を登り切り、公園に着いた。眺望が一気に開けた…かというとそうでもない。でもここまで登れば(平日だし)人っ子ひとりいないだろう…と思ったがおばさんが独りベンチに座っていた。水筒持参だったからお散歩かな。幸いあずまやは無人。


 テーブルとベンチの高さが同じというのは若干使い勝手が悪いが、これ最初は縁台だけが置かれていたところへ後からベンチを付け足したんじゃないかな。とりあえず酒とつまみの置き場所が広くて有り難い。




 人誰しも、あずまやの柱に落書きしたくなるものらしい。世界遺産や便所の落書き(落差デカいな)がしばしば問題となるが、古人のそれが貴重な歴史資料になることもあるわけだし、差別的内容は断じて許してはならんけど行為自体は大目に見てもいいんじゃないかな、てのが私の考え。そんなことより金儲けや外交問題の種にしかならぬ「世界遺産」なんてものの必要性を感じないんです。ヒネクレモノですみません。




一夜城 本醸造

秦野菖蒲庵の海老焼売

アボカドサーモン巻

 小田原百貨店大雄山店で発見したもうひとつの掘り出し物。そもそも「一夜城」は小田原酒販共同組合の手印銘柄だが、現物を目撃したのは20年ぶりくらいだな。ちなみに当時は相田酒造(入生田移転前)が製造していたと思う。その後姿を見かけることがなかったのは量販店に流れてこなかったからだろう。ちなみに現在は本品が小田原市のふるさと納税返礼品のひとつとして利用されているようだ。で、謎なのが


 肩ラベルに記された「神奈川銘醸」なる会社。ネット検索しても「酒王冠」データなるファイルしか見当たらない。会社所在地が大井町上大井だから、石井醸造と井上酒造が関係した共同瓶詰工場なのかな、などと推測。ともあれ、本品の現在の製造元は



 「曽我の誉」の石井醸造でした。といえば昨秋、本醸造生貯蔵酒「箱根のしずく」の旨さに目を見張ったものだ。こちら火入れのお酒はどうだろうか。

 旨いなぁ〜。

  これまで飲んできた「曽我の誉」といえばほぼ佳撰カップ、あれはあれでいいのだけれど普通酒ゆえの雑味があるから、全てのシチュエーションで美味しく飲めるとは言い難い(過去に何度も言及しているが、あのカップ酒がいちばん旨いのは小田原梅まつり別所会場で供される、湯燗したものをおでんor味噌田楽をお供にいただく時)。しかしこちら本醸造は雑味なくすっきりでありながらもち四段仕込みならではのなんとも言えぬ甘み。辛口好みの貴兄にお薦めする気は毛頭ありませんが、甘口・旨口好きの私にはもうドンピシャのお酒である。ご近所のお酒はきちんと飲んでおくべきでした。ちなみに「曽我の誉」名義の本醸造酒はこの辺のスーパーで普通に売られているから「一夜城」を目にしなければ反永遠的に手を取ることはなかったかもしれない。いかなる心境の変化があったかはわからぬが、突然このような商品を扱い始めた小田百大雄山店に感謝。

  公園は静かだし焼売・太巻も美味しかった。そして、近年ちょっと元気がないように感じていた我が「小田百」が久しぶりに本気を見せてくれたのが嬉しい。実はビール部門でも本気を見せてくれているようなので、近いうちに再訪せねばと思っております。

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